「フィンランド人だけど、スウェーデン語がしか話せない」差別と心の葛藤

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スウェーデン語地域とは

まずは、フィンランドのスウェーデン語話者の地域について、知識を深めましょう。

公用語のスウェーデン語

フィンランドの公用語は、フィンランド語とスウェーデン語ですね。

スウェーデンの統治下にあったフィンランド(13世紀後半から1809年まで)。

その統治時代に、スウェーデン文化がフィンランドに深く浸透しました。

スウェーデン移民も多いため、現在でもスウェーデン語が公用語として用いられています。

 

スウェーデン系フィンランド人

スウェーデン移民とその子孫たちによって構成されているのが、スウェーデン系フィンランド人

スウェーデン語を主に話すフィンランド人たちのことです。

 

フィンランドの総人口の5.5%にあたる約290,000人がスウェーデン語を母語として住民登録している。                 (Wikipedia: スウェーデン系フィンランド人)

5.5%という少なさで、

フィンランドにおいて、少数言語集団かつ文化的マイノリティーですね。

wikipedia出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Svenskfinland.png#/media/ファイル:Svenskfinland.png

 

この青色の地域(南西部や南東部)に、スウェーデン系フィンランド人は暮らしています。

 

ムーミンの産みの親、トーベヤンソンがスウェーデン系フィンランド人として有名です。

母国語がスウェーデン語であったトーベは、スウェーデン語でムーミンを作成しましたが、

本人はヘルシンキ生まれのフィンランド人です。

また、「フィンランディア」を生み出した作曲家シベリウスも、この少数言語集団出身でした。

 

スウェーデン語で書かれたムーミン : https://fvdwaa.home.xs4all.nl/mumin.htm

 

Carola のバックグラウンド

今回インタビューさせてもらったのは、大学で知り合った古い友人 Carola。

彼女は、50%以上 がスウェーデン語話者、の地域で生まれ育ち、

その後、スウェーデンの大学へ進み、交換留学生として日本にやってきました。

フィンランド語が全く話せず、Moi、くらいしか知りません。

スウェーデン語話者の地域:ポフヤンマー県

私が生まれ育った地域は、50%以上がスウェーデン語話者の地域で、

Ostrobothnia(ポフヤンマー県)と呼ばれ、

フィンランドの西海岸中部、Vaasa周辺に位置しています。

(Ostrobothniaは、スウェーデン語で Österbotten、フィンランド語でPohjanmaa)

スウェーデン語話者が50%を超え、フィンランド語話者が45%ほどです。

 

ポフヤンマーの中心から、たった30分ほど離れただけで

フィンランド語話者が89%になり、
ポフヤンマー県の境界を越えれば、スウェーデン語が聞こえる可能性はもうありません。

 

他の地域との違い

さて、スウェーデン語が話されている地域と、そうでない地域で、何が違うのでしょうか?

文化的な違い

フィンランドでは1年を通して、

フィンランド語話者のみによってお祝いされる祝日やイベント

スウェーデン語話者のみによってお祝いされる祝日やイベント

の2種類があります。

フィンランド語話者側

5月12日は、”フィンランドらしい日” (Day of the Finnish Identity) であり、

かつ、多くのフィンランド人にナショナリティ意識を感化させた政治家

ユーハン・ヴィルヘルム・スネルマンの誕生日でもあります。

ただ、それほど広く祝われている記念日でもなく、特に特別なお祝い事はないそうです。

 

スウェーデン語話者側

11月6日は、”スウェーデンらしい日” (Finnish Swedish Heritage Day) で、

スウェーデン系フィンランド人のための祝日です。

グスタフ・アドルフというスウェーデン最盛期の国王の命日でもあります。

 

この時期には、スウェーデン系フィンランド人によるたくさんの催し物が企画されます。
またクリスマスの時期、12月13日は、聖ルチア祭がスウェーデン語話者の地域で祝われますが、
他地域では行われないようです。

政治的問題や政党

フィンランドには、

Perussuomalaiset = “True Finns Party” (真のフィンランド人党)

Suomen ruotsalainen kansanpuolue = “The Swedish People’s party of Finland” (RKP) (フィンランドのスウェーデン人党)

という政党があります。

両者は直接的な対立はしていないものの、対局の位置にあります。

 

真のフィンランド人党

真のフィンランド人党は、フィンランドの右翼ポピュリスト政党として知られています。

彼らの政策は、主にフィンランド人の仕事を守り、非合法移民の排斥を謳うものです。

また、EU所属への批判もしています。

前回の選挙では、議会で社会民主党に次いで多くの議席を獲得し、与党として選出されなかったことに対し人々の批判が大きかった。詳しくはこちら:https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20190422-00123212/

 

フィンランドのスウェーデン人党

フィンランドのスウェーデン人党は、スウェーデン語をフィンランドの公用語として残すことや、

南西フィンランドのスウェーデン語地域コミュニティの強く保つことに尽力しています。

部分的にリベラルであり、その他の部分では保守的な体勢を持っています。

 

言語の違い

都市の名はスウェーデン語表記?

https://www.mattigronroos.fi/w/index.php/Tiedosto:Pori4.jpg

(Vasaがスウェーデン語、Vaasaがフィンランド語 :

Björneborgがスウェーデン語、Poriがフィンランド語)

 

都市の名前は、フィンランド語とスウェーデン語、両方があります。

だいたい、フィンランド語話者がマジョリティの地域内の看板は、フィンランド語の表記が上、

スウェーデン語話者がマジョリティの地域内では、スウェーデン語が上に表示されます。

 

スーパーの商品はスウェーデン語?

どの商品か見分けることは、全国どこでも簡単にできます。

すべての商品には、フィンランド語とスウェーデン語で書かれた成分表が必ず載っているからです。

 

問題は、スーパーの中で、食品の場所を探すとき。

規模の小さい店舗だと、「看板」や、掲示板は、たいていフィンランド語しか書かれていません。

 

テレビはスウェーデン語に切り替わる?

フィンランドのテレビ番組には、

スウェーデン語で報道することに特化したニュース番組やテレビ番組が少しだけ存在しますが、

他のほとんどの番組は、フィンランド語のみです。

ただ、スウェーデン語話者の地域の人々は、スウェーデンのテレビ番組を見ているので、ほとんど問題ありません。

 

スウェーデンの学校に進む人は多いのか

多くもないけど、少なくもないとのこと。

大学に出願する時に、スウェーデン語話者たちが考えるのは、

① フィンランドの大学で、自分が受講したい学問がスウェーデン語で受けられるかどうか
② その大学は、入試難易度が高いかどうか

もちろんスウェーデン語で受講する学問の内容によって、フィンランドの大学に入学するのが難しいかどうかは大きく左右します。

選択肢が少なかったりする場合は、スウェーデンの大学に申請することもあります。

数年前はスウェーデンの大学に入る方が簡単でしたが、今はもうそんなこともないようです。

 

スウェーデン語話者への差別

私と友人がヘルシンキで電車を待っていた時、スウェーデン語でおしゃべりをしていると、
酔っぱらった一人の男性が、ひどく怒ってきたことがありました。

また、彼女や、多くの友人たちが、

「スウェーデンへ帰れ!!!」

と罵られたことがあるそうです。

50%以上がスウェーデン語話者という、彼女の出身地域、ポフヤンマー県内でもです。

 

リンヌ (フィンランド語話者のフィンランド人)

私は、彼らに対する差別的発言をよく聞きます。
「彼らはスウェーデン語だけを話して、フィンランド語で話そうとしない。生意気なやつらだ」

と思っている人がいますが、
彼らはスウェーデン語が母語なのであって、フィンランド語はもともと話せないのです。

 

 

【最後に】葛藤するアイデンティティ

フィンランドのスウェーデン語話者地域に育ち、

現在はスウェーデンに住んでいるCarolaは、インタビューの最後にこう語りました。

私は、フィンランドが好きです。

私の人格も、フィンランド人だと思います。

少なくとも、スウェーデン人である気はしません。

でも、国内旅行で英語を使わなければならない国に住むのは、

あまり良い心地がするとも言えません。

 

また、仕事でも不利が生じると思います。

フィンランド語を話す客に対応することができませんから。

同じ国出身の人に、英語を使って話さなければいけないのは、

ちょっと恥ずかしい気分になります。

 

言語の壁がないのなら、フィンランドに住むのは悪くないです。

スウェーデンでは言語の壁がないので、フィンランドよりも快適に住めます。

でも、永遠に自分をスウェーデン人だと思うことはできないと思います。

一方で、自分を100%フィンランド人だと思うこともありません。

 

つまり、100% 自分の居場所だと思う場所はない、ということです。

母国フィンランドでも、時々自分はこの国の人ではない、と感じますし、

スウェーデンでも同じです。

スウェーデンで生まれたわけではないので、100% 自分の居場所とは思えません。

 

というわけで、どちらに住むのが好きか、は自分でもわかりません。

どちらの国もいい面と悪い面があるので。

ただ、今はスウェーデンで生活し、フィンランドの家族を訪ねるという暮らしに満足しています。

 

 

 

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