今回、この記事を作成するきっかけになったのは、自身も1型糖尿病を患っているという読者様から頂いたご連絡でした。
以前、こちらの記事で記載してしまっていた「フィンランドの(1型)糖尿病発症率とアルコール飲酒量の間には何か関係がある」
という文言は間違っている、訂正してほしいというご指摘でした。
フィンランドは、1型糖尿病発症率がとても高いことで知られています。
1型糖尿病は、糖尿病という名前こそついていますが、生活習慣に影響され発症するものではありません。
したがって、「フィンランドの(1型)糖尿病発症率とアルコール飲酒量の間には何か関係がある」というのは、大変な誤りです。
今回は、私の無知によって不快な思いをさせてしまった方々へのお詫びと、
フィンランドをきっかけに、1型糖尿病に関する正しい知識を広めたいという思いから、
私なりに調べた情報をお伝えしようと思います。
糖尿病とは
糖尿病とは、血液中に「ブドウ糖という糖(血糖)」が過剰になっている状態を指す病気です。
この過剰状態がずっと続くと、いつか心臓病や失明などといった、重い病気を引き起こす可能性があります。
この病気の鍵となるのが、インスリンというホルモンです。
インスリンは血液中の血糖濃度を下げる働きをしてくれるホルモンなのですが(血糖を細胞に取り込んでくれる)、
このインスリンの分泌が少なくなったりすると、血液中の血糖濃度が過剰になってしまうのです。
インスリンの分泌が低下する要因としては、インスリンを作る臓器「すい臓」の働きの低下などがあります。
より詳しくわかりやすい解説はこちらのページから:糖尿病情報センター
糖尿病の種類
糖尿病にはいくつか種類がありますが、
大きく「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2種類に分けることができます。
(他にも、妊娠糖尿病、他の病気によって発症する糖尿病などがあります)
同じ糖尿病と呼ばれる「1型糖尿病」と「2型糖尿病」ですが、実は両者は別物なのです。
2型糖尿病
まずは、私たちがよく見聞きする方の糖尿病から、見ていきましょう。
<2型糖尿病の特徴>
・日本では最も一般的な糖尿病
・40代以降から発症する人が多い
・肥満気味の人に多い
・原因は、生活習慣や遺伝の影響
<治療方法>
・適切な食事や運動と薬
薬には、飲み薬やGLP-1受容体作動薬という注射、インスリン補充のための注射などがあり、
患者さんに合わせて使い分けます。
1型糖尿病
私たちのよく知る糖尿病は、「2型糖尿病」です。
では、1型糖尿病は、2型糖尿病とはどう違うのでしょうか。
<1型糖尿病の特徴>
・フィンランドでは最も一般的な糖尿病(日本では珍しい)
・年齢に関係なく発症する
(15歳以下の子供が発症するタイプと、30~50歳で発症して少しずつ症状が悪化するタイプがある)
・正常~痩せている人が多い
・原因はわかっていない
(自分の体のリンパ球があやまって内乱を起こし、自分自身のインスリン工場、膵臓にある膵島β細胞、の大部分を破壊してしまうことで発病すると考えられている)
<治療方法>
・インスリン注射
・(または臓器移植)
このように、遺伝や生活習慣が主な理由である2型糖尿病とは異なり、
1型糖尿病はほとんど発症の原因がわかっていないのです。
「糖尿病?生活習慣が悪いんじゃないの?」
「飲みすぎ、食べすぎてるんだよ」
このような言葉は、相手の心を傷つけてしまうかもしれません。
また、”生活習慣の改善” や “飲み薬” で改善が見込める2型とは違い、
1型糖尿病の場合は、多くの場合、インスリン治療に依存しなければなりません。
1型糖尿病の多いフィンランド
世界の統計
1型糖尿病の発症率は、地域や国によって大きく変わります。
国際糖尿病連合(IDF) IDF DIABETES ATLAS 9th edition 2019 の調査によると、
世界の1型糖尿病の発症率/患者数は以下のようになっています。
>世界のエリアごとでは、1型糖尿病患者が最も多いのは、ヨーロッパと北アメリカ&カリブ海エリア。合計それぞれ162,600人と121,400人。
>0~14歳の1型糖尿病患者が最も多いのは、インド、アメリカ、ブラジル。
>年間人口10万人あたりの1型糖尿病発症率が最も高いのは、フィンランド(62.3%)、スウェーデン(43.3%)、クウェート(41.7%)。
発展途上国では、インスリン治療が行えないため、1型糖尿病患者が早い時期で死亡してしまうそう。先進国との間の医療格差が問題視されています。(参照)
なぜフィンランドは1型糖尿病患者が多いの?
正確な情報源は見つかりませんでしたが、こちらのサイトでは
フィンランドで1型糖尿病の発生率が高いのは、日照量の少なさによるビタミンD不足が関係している
と紹介されており、
対策として、ビタミンDのサプリメントの摂取が奨励されている、としています。
現地の様子
こちらのサイトによると、
(フィンランドでは)どこの小学校に行ってもインスリン注射をしている子どもがいて、学校で注射しても目立つことはないでしょう。
とあります。
筆者は、留学中に実際にインスリン注射をしている方を見かけることはありませんでしたが、
読者様はフィンランド旅行中、こんな体験をされたそうです。
私もフィンランドが大好きで、現地に行ったことがあるのですが、インスリン注射やインスリンポンプを街中で触ったり、堂々と血糖測定をしている人たちを見て話し掛けて友達になってもらったりしました!
日本と違ってそのあたりをオープンに生活できるのは周囲の理解があってこそで、素晴らしいことだと思います。
日本では珍しい1型糖尿病とあって、周囲の理解がまだ十分ではありません。
この記事をご覧になってくださった方は、是非周囲の友達や家族にも共有してみてください。
正しい知識を広めて、居心地の良い環境を作っていきましょう。
この記事は、ご指摘いただいた読者様と、複数のウェブサイトを参考に作成しました。
読者様、改めてお詫び申し上げますと共に、勉強の機会を下さり、ありがとうございました。
<参考文献>
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