前回のお話
次の日から、学校が始まった。
昨日、寮の共同キッチンで知り合いになったロシア人の男の子と、
その子の友達の、フランス人の女の子2人(初対面)と、待ち合わせて学校へと歩く。
「こんにちは!スーイです、よろしくね!」
「…フランスの道にも、こんな風な街路樹があるの?」
話が途切れないようにしなきゃ、という変なプレッシャーを背負い、
自分でもつまらないなぁと思うトピックで、空白の時間を無理やり埋める。
知り合いほぼ0の状態で、私は友達を作ろうと必死だったのである。
道が広いことに驚いた。光を受けて、若草色に染まった街路樹が、広い道の左側に数メートルおきに並んでいる。
建物はみな似たような見た目のものが並んでおり、碁盤の目のようにすっきりとシンプルに並んでいる。
ある大通りを横切ったときには、白樺の木がずらーーっと並び、
まさに緑のカーテンのトンネルのようで、油断すると見惚れて立ち止まってしまうほどだった。
東京のごみごみと狭い世界と比べると、あぁ、外国のキャンパスらしいなと思った。
フィンランドには英語表記がない
はじめて、K city market という町のスーパーに買い出しに行ったときのことを思い出す。
洋服用洗剤を買おうと思った。
だが、売り場にたどりついたはいいものの、柔軟剤と洗剤の区別がつかないのである。
なぜかというと、
フィンランドのスーパーの商品の表記は、たいていフィンランド語とスウェーデン語で書かれていて、
良くてロシア語、ノルウェー語、デンマーク語が付いてくる。
(これはある牛乳の原材料表示。ここには、フィンランド語、スウェーデン語、エストニア語が書かれている。ほとんどのパッケージには英語表記がどこにもないのである)
英語圏以外の国での留学で最も不便なことと言っても過言ではない。
文字が全く読めないので、絵柄でなんとなーく判断して選ぶのだが、
それがなんともスリリングで、優柔不断な私には洗剤を買うだけで一苦労だった。
他にも、野菜を買うときに、重量計に乗せて、その野菜の該当する番号を押して、値段シールを張らなければならない。
おっかなびっくり重量計に乗せてみたものの、そこからどうしてよいかわからない。
近くを横切った若い女の子に「すみません、これ、どうやって使うの?」とたどたどしく聞くと、
「こう使うのよ」
と手本を示してくれて、にっこり笑って去っていった。
量りの使い方はこちらで説明してるよ!
北欧で困ったことシリーズ
今思えば、フィンランドに来る前に立ち寄ったコペンハーゲンで、
「なんでこんな簡単なことがわからないんだろう…!」
と、本当になんでもないことでつまづくことがとても多かった。
エレベーターのボタン事件
だいたい、日本のエレベーターのボタンの付いているところと同じだが…
コペンハーゲン空港にあったそのエレベーターのボタンは、
開閉するドアの、フレームの内側についていたのである。
いつものように「ボタンを押そ….えっ!?ボタンが…ない!?」
一人で何十分も右往左往して、誰かが使うまでそばで様子を伺い、
ボタン一つ押すのに15分くらいかかった(笑)
もちろん、
② 切符の買い方 や、
③ ホームがどれかわからないし、
④ 掲示板などの言葉がわからない
ので、ちんぷんかんぷん。
⑤ 「改札がない」というカルチャーショック
⑥ 電車のドアを自分で開けるボタン
がついていることも知らなかったので、
出発時刻前なのにさっそく閉まるドアを見て、焦ったのなんの。
⑦ 店の名前≠何を売っているか
言語が全く理解できないので、
窓から店の中をのぞいてやっとスーパーなのか薬屋なのかわかるレベル
⑧ 道順を確認する手間!
1) まずwifiのあるカフェを探し、
2) そこで飲み物を買う
3) wifiパスワードを入力して、
4) 調べものをする
※ 実行して、道に迷うと1に戻る。
SIMは北欧では安いので、数日でもケチらずに買うことを強くおすすめします。
⑨ トラムやバスの使い方がわからないので徒歩
スウェーデンについた時なんて、スウェーデン人の友達に「どうやってバス使うの?」と聞いたところ
「あー、あんたは携帯のアプリ使えないから無理だね。歩いて来て」
と言われ、計30kgのスーツケースと共にさすらいました。
結構なエクササイズ。
(北欧の都会に行くなら、スーツケースやめといた方がいいです。レンガ道なので全然進まない)
自分がとる行動の一つ一つに、労力と手間がかかるのが、異国を旅するということなのだと思う。
こういうことが毎日の中で常に起きているので、
自分でもわからない間に、ずっと気を張っているのだ。
特に最初の頃は、
期限つきの手続き、
覚えなければならない要項、
見慣れない道、
知り合いが全くいない状況
の中でサバイバルしなければいけないので、ストレスがかかるのは当たり前だった。
知り合いが全くいない心細い状態の中で、どうなるかわからない不安に駆られていたのだが、
その同じ日、つまり学校初日に、
私のフィンランドでの留学1年を、人生最高の思い出にしてくれた大切な人たちに会うのである。
大学の講堂で、緊張の面持ちで必死に英語のオリエンテーションについていこうとしている私は、
数時間後に、一生の友達に出会うことなど知る由もなかった。
→次回に続く。
番外編
私がフィンランドが大好きになった理由。
コメント