ちまたでは、フィンランドを含む北欧各国に住む人々は、英語がネイティブレベルと言われています。
しかし、本当なのでしょうか?
この記事では、フィンランドの中規模都市に一年滞在した筆者の経験から、
主観的にフィンランド人の英語を分析していきます。
フィンランド人は英語がペラペラ?
EFが出している English skill の世界「英語ペラペラな国」ランキングをご覧ください。
この2019年の調査によると、フィンランドは世界7位です(ちなみに日本は53位)。
スウェーデン、ノルウェー、デンマークに比べると、少し劣りますが、
レベルが「Low」の日本と比べると、「Very high」のカテゴリ内に入っているフィンランドは、
英語運用能力が高いと言えます。
でも、本当にペラペラ?
私の印象では、みんながみんなしゃべれるわけじゃない。
思ったほどは、しゃべれないな、といった感想です。
英語が話せない人には、3割くらいの割合で出会いました。
都市によって、英語が話せる割合に大きな差が出ます。
私が暮らしていたヨエンスー(中規模都市)では、
大学生は、ほぼ100%英語を話せ、お年寄りの方でも、多くの方が英語を話せました。
大学生以降の大人や高校生も、流暢さには差があるものの、ほとんどは英語を話せる印象でしたが、
一方、私が出会った小学生くらいの子供たちはまだ英語を話せませんでした。
英語が話せる割合が極端に減るのが、田舎の地域。
私が短期間滞在した、フィンランドの小規模都市では、
英語が話せる方の方が珍しいほどでした。
本当に全く通じないので、翻訳アプリが必要です。
もちろん、日本人が訪れるヘルシンキやタンペレといった大規模都市では
ほとんどの人が英語を流暢に話せる印象で、全く持って不自由はありません。
こちらの動画では、ヘルシンキの人々に英語でインタビューしている様子を見ることができます。
フィンランド人の英語訛り
フィンランド人の話す英語にも、訛りはあります。
もちろん個人差は広く、聞き取りづらいと感じる人から、
ネイティブにとても近いと感じる人まで幅広くいます。
① どちらかというと英国英語が多い
フィンランドの学校では、アメリカ英語もイギリス英語も習います。
が、やはり地理的に近いイギリス寄りになってしまうのでしょうか、
発音や単語において、イギリス英語の使用率が多いです。
代表的なのが、「Programme」。
これは英国英語のつづりで、アメリカ英語では「Program」とつづります。
フィンランドの大学のHPには、みな「Programme」と書かれていますので、
チェックしてみてください。
発音は、どちらかというと英国英語寄りのアクセントの人が多いですが、
どっちつかず、の場合がほとんどです。
現に大学のフィンランド人の友人たちは、各国の留学生が話す訛りの強い英語もなんなく聞き取っています。
② Rが巻き舌になりがち
フィンランド語の発音は、日本語に似ていると言われています。
ただし、Rの発音だけは全くの別物。
フィンランド語のRはスペイン語のような巻き舌のため、
フィンランド人は、幼少期からRを巻き舌で発話する練習をするそうです。
私はRがなかなか習得できなかったので、小学校の頃、よく居残り練習させられていました(笑)
こうした背景から、多くのフィンランド人の英語の発音には、
フィンランド語の強いRの音が残ってしまいがちです。
特に、フィンランド語から急に英語で話し始めたりすると、
フィンランド語のRの発音から、英語のRの発音に切り替えるのに戸惑うよう。
ちなみに、結構な人がRにフィンランド語の癖がついています。
③ 総じて単調な話し方
英語の複雑なアクセントのつけ方に比べると、
フィンランド語のイントネーションは極めてフラットです。
基本的に、文章の頭に一番高い抑揚を付け、文章の後ろに向かうにしたがって、
徐々に下がっていくような話し方です。
フィンランドでは、マ が一番高い所で、コ に向かうにしたがって低くなります。
というわけで、英語で話している時も、
フィンランド語特有のイントネーションが抜けきらず、
非常にフラットな、一定の音程を保つように英語を話すフィンランド人が多いです。
だから僕は、英語を話すときは、意識して抑揚をつけるようにしています。
実際に聞いてみよう
こちらはややフィンランドアクセントが強めのお二人。
フィンランド人の英語と言えばこれ、という印象。
私の留学先の大学の大多数の先生は、みんなこんな感じの口調でした。
こちらの男の子はほとんどアクセントが残っていない、クリアな英語を話しています。
大学で留学生とよく交流しているフィンランド人学生の英語といった感じ。
もちろん人によります。
こちらはなんと、「フィンランド語訛りの英語の、吹替動画」に特化したチャンネルです。
みんな大好き「all I want for Christmas is you」をフィンランド語訛りで歌ってみた、というもの。
カオスなチャンネルなので、ぜひチェックしてみてください。
その他、フィンランド文化に触れられるyoutubeおすすめをこちらから紹介しています。
フィンランドの大学の英語事情
大学では英語で授業が受けられる
大学では、フィンランドだからといってフィンランド語で授業を受ける必要はありません。
大学では、留学生向けとフィンランド人学生向けに授業が分かれており、
留学生向けはすべて英語で開講されます。
ちなみに、フィンランド語で行われているフィンランド人学生向けのものも取りたければ取れます。
フィンランドの大学へ交換・正規留学する際などには、
TOEFL ibt または IELTS の資格が必要です。
留学生向けの授業は、フィンランド人の教授が英語で授業を運用します。
フィンランド語訛りの強い教授から、訛りがほとんどない英語を話す教授まで、様々ですが、
学業に支障が出るレベルでは決してありません。
教授の訛りに文句をつける前に、自分の英語リスニング力を磨きましょう。
フィンランド人の学生たち
ところで、大学に行けば、すぐにフィンランド人の友達がたくさん作れる、と思っていませんか?
フィンランドの大学生が英語ペラペラ = 彼らと交流が盛んにできる、とは限りません。
大学では、ほとんどの場合、留学生は留学生同士、フィンランド人はフィンランド人同士で交流しています。
まず第一に、大学でフィンランド人学生と交わる機会は、
- 新入生歓迎会などの学期はじめのイベント
- 食堂
- サークル等
程度しかありません。
新入生歓迎会などの学期はじめのイベント
フィンランド人のお友達を作りたいなら、ここが最大のチャンスです。
ただし、イベントは「留学生用の歓迎イベント」「新入生用の歓迎イベント」と分かれている場合もあり、
共有されているイベントはかなり少ないです。
フィンランド人学生用イベントは当然フィンランド語で書かれているため、気が付かないこともしばしば。
食堂
留学生は留学生用の授業を取っているため、フィンランド語で開講されている授業を取らない限り、
フィンランド人学生と一緒に授業を取ることはまずありません。
というわけで、学内で唯一フィンランド人と留学生が入り混じる場は、食堂です。
しかし、食堂では、フィンランド人はフィンランド人同士で、フィンランド語で会話しているため、
そこに英語で割り込むのはなかなか勇気がいります。
話しかければ英語で応答してくれるものの、普段は母国語のフィンランド語で話しているため、
見知らぬ人の立ち話に参加して仲良くなる、なんていうことも、なかなか起きません。
日本の大学を思い出してみてください。留学生と日本人学生が分離していませんか?
フィンランドの大学でも、同じです。
サークル等
フィンランドは日本の大学と違って、サークル等がほとんど存在しません。
東フィンランド大学では、3つか4つほど雑多なサークル + 各国の言語を学び合うイベント
があります。
こういったサークルに在籍するフィンランド人は、普段から留学生との交流が好きな人や、
ディベートクラブのように、英語が好きな学生たちです。
こういった場は、最もフィンランド人の友達を作りやすい環境にある一方、
サークルに顔を出してくるメンバーはある程度決まっているため、友達の輪は広げにくいです。
では、どうしたら現地の友達を作れるの?
一番良いのは、留学初日から面倒を見てくれるチューターを通じて、友達の輪を広げること。
東フィンランド大学では、留学生数人のグループ1つにつき、1人のフィンランド人チューターが付く、という制度があり、
もしそのフィンランド人チューターが積極的な人であれば、友達を紹介してもらえます。
ただし、学期始まりだけ面倒を見て消えてしまうチューターが多いため、運が必要です。
私が行ったのは、
- 留学に行く前からオンラインで現地に友達を作っておく
- 大学ではなく、町のボランティア団体やイベント、教会を通じて、顔見知りを作る
です。
詳しくは、また後々記事にしたいと思っています。
英語が通じなかったシーン一覧
以下では、私が体験した「フィンランドの人に英語が通用しなかったシーン」を取り上げます。
こんな感じなんだなぁー、とイメージをつかんでみてください。
経験その①
こちらの留学体験記第2話にて登場した、「タクシーのおじさん」
英語が理解できない方でした。
ヨエンスーで初めて話した方だったので、
もしかしてこの町の人は英語しゃべらないのか!?と冷や冷やしましたが、
実際そんなことはありません。
ヨエンスーでは、英語が話せる人の方が多いです。
経験その②
ヨエンスーのキオスクのお姉さん。
30代、40代くらいの方なのですが、英語がうまく話せないようでしたので、
英単語で会話して、SIMの契約を行いました。
(心が通じ合えば、単語だけでも問題ない!)
ヨエンスーのKioskiの店員さんは英語があまり得意でない人が多い印象でした。
ヨエンスーでは、街中の店員さんの中には、あまり流暢でない方もまあまあいますが、
1年暮らした中で、英語に関して困ったことは一度もありません。
「街中で英語使えなかったら、英語上達しないんじゃないの?」
ほとんどを大学で過ごし、街中で人と話す機会がそもそも少ないので、街の人の英語レベルはあまり英語力アップと関係ないと思います。
スーパーのレジなんか、
「レシート要りません」と言うだけなので。
むしろフィンランド語でレシート要りませんの言い方を覚える方が早いです。
ちなみに、「Ei, kuittia, kiitos」と言います。
「エイ、クイッティア、キートス」です。
経験その③
ヨエンスーにて、お散歩中のおじいさんたちに話しかけられることが多かったのですが、
いつもフィンランド語で話しかけられます。
私が英語しか話せないと知ると、ニコニコしながら無言で遠ざかっていきます…
個人的に、「フィンランド語勉強しなきゃ」と真剣に思った瞬間第一位です。
なぜアジア顔なのにフィンランド語で話しかけられるのか。
この謎は先日フォロワーさんに教えていただき、解けました。
気になる人はこちらから。
経験その④
オウル付近の田舎(小規模都市)に短期滞在した時。
英語が話せる人の方が珍しいほどでした。
真冬の-20℃の日、散歩に出かけた私は
あたり一面雪で覆われた田んぼのど真ん中で迷子になりました。
携帯は気温が低すぎるせいで、充電切れに。
助けを求めて老婦人の家に押しかけましたが、英語が通じませんでした。
そんな緊急時に思い出したのは、
大学でちょこっと学んだ、なけなしのフィンランド語。
なんとか行きたい住所を伝えることができ、車で送っていただきました。
もしここでフィンランド語を少しでも知らなかったらどうなっていたんでしょう…
大学の講義のおかげで、命が助かりました。
留学する皆さん、フィンランド語講座を甘く見ずに、しっかり勉強しましょう。。。
そんなときは、知っているフィンランド語の単語とジェスチャーで意思疎通を試してみましょう。世界共通の笑顔を忘れずに!
経験その⑤
ヨエンスーのスーパーで、店員さんに英語で質問すると、
「ごめん、僕英語があまり得意じゃなくて…今英語が話せる人を呼んでくるからちょっと待っててね」
といったことがたびたび起きます。
全然英語が話せているのですが、なぜか敬遠してしまうのです。
なんだか日本人に似ている部分を感じます。
ちなみに、非英語圏のお店では、英語で尋ねるとたびたび無視される、といったことが起きますが、
フィンランドのお店では、英語で質問しても、丁寧に対応してくれます。
恥ずかしがらず、困ったことがあれば尋ねてみましょう。
フィンランド人が【どうしても】言えない英単語!
私が出会ったフィンランド人の約8割ほどが、どうしても言えない英単語がありました。
それは、Squirrel(リス)
フィンランドでは野生のリスをよく見かけることがありますが、そのたびに
「すくぉぉれれ… ちょ、待って、すくうぉぉぁ… 待って、言えなーい!!(笑)」
と、ほとんど必ず毎回、言葉を詰まらせます。
その理由は、やはりRの発音方法。
どう頑張っても、少しRが巻き舌気味になってしまうフィンランド人にとっては、
Squirrel は、Rを2回連続 で発音しなければならないため、
舌がこんがらがってしまうのかもしれません。
また、フィンランド語には SUSI(おおかみ)という単語があります。
SUSIはちゃんと「スゥシィ」と発音できるのですが、
SUSHIはなぜか「シュシィッ」と言ってしまいます。
いつかフィンランド人とお寿司の話題になったら、耳をそばだててみてください。
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