【とあるスウェーデン人との出会い】”北欧”に出会い、”世界”が広がった。

文章で伝えたい日記

それは大学一年生の春。

授業を受けていると、一枚の紙が配られた。

「スウェーデンから夏の間だけ、交換留学生たちがやってきます。彼らのチューターのお仕事に興味があったらサインしてね」

『北欧かぁ…スウェーデンってなんとなく爽やかだってイメージしかないなぁ…確かスカンジナビアだよね。』

当時、北欧に全く興味がなかった私には、未知の世界。

『まあ短い期間だし、試しにやってみるか』

という軽い気持ちで、何気なくサインした。

それが、後に私のフィンランド留学のきっかけとなる。

 

やって来たのは、爽やかイケメン。

 

….初めまして。僕はFabbeと言います。

私にとって、外国の人とちゃんと向き合って一対一で話すのは、英会話教室以来の出来事だった。

こんにちは!スーイです!よろしくお願いします!

よろしくお願いします

・・・。

 

元気よく挨拶してみたものの、何を話したらいいか全くわからない。

外国の人ってもっと快活で、マシンガントークで話しまくるんじゃないの?

当時、外国の人を見る機会がアメリカのテレビドラマだけだった私にとって、

外国人=テレビの中のアメリカ人 であった。

 

えーっと、スウェーデンのどこから来たの?

マルメっていう、スウェーデンの南の部分だよ。

スマホを取り出して、地図で見せようとしてくれる Fabbe。

一方の私は、緊張しすぎて顔もまともに見れないし、頭の中も真っ白。

実は、Fabbeも”ド”がつくほど緊張していたと知るのは、後のことである。

 

Fabbe は本当に寡黙だった。

週末は何したの?

とやっと話題を絞り出して、蚊の鳴くような声で尋ねても、

…特に何もしなかったよ(笑)

と一言で会話を終了させてしまうので、

最後の最後まで、私は Fabbeにあまり好かれていないんだと信じて疑わなかった。

 

私の何がいけないんだろう?

容姿かな?

小さすぎる声?

私の話がつまらなすぎるのかな?

英語でミスしまくるからバカだと思われてるのかな?

 

彼がいつも真顔で静かなのは、

全部私のせいなんだ、私が自分の現状を治せば…

 

当時はそれが北欧の文化なんだと、気づくことができず、

かなり傷ついたように思う。

要は自分に自信がなかったのである。

 

「北欧の人たち」の印象

Fabbeは、真っ金髪に真っ青な瞳、スラっとした体型を持ち合わせていて、

みんながイメージする「北欧の人」そのものだった。

 

しかし、そんな容姿の人は Fabbe くらい。

他の人たちは、まさに色とりどりの髪で、奇抜にピンクや青に染めている人もいた。

昭和のおじさんみたいな格好をしている、日本の昭和が大好きな人もいたし、

ヒッピーな服でいつもふらりとやってくる人、

韓国アイドルのような服を着た、独特な絵を描く女の子など、

個性的な人たちがたくさんいた。

そんなわけで、スウェーデンの留学生が集まる空間は、いつも自由で奔放な雰囲気に溢れていたのを覚えている。

最初はかなり面食らったものの、話してみるとみな優しく気さくで、

今思うと、なぜ私はそこまで英語で話しかけることに怯えていたんだろうか?と思う。

というか、そもそもその頃の私は、人と話すことにものすごく神経を使っていた。

 

彼との出会いから学んだこと

Fabbe を始め、多くのスウェーデン留学生たちは、人権や人種差別等に関してとても敏感だった。

実際その中の数名はレズビアンだったし、

会話の中でさらっと「こういうのはどうかと思うね~」と問題意識を常に共有していたのは、

私にとってとても新鮮で、そこから学ぶことも多かった。

指を差すのは失礼

日本人のチューター仲間に「スーイちゃんのパートナーは誰?」

と聞かれた時に、

「Fabbe!」と言いながら彼に向って指を指してしまった。

それが失礼なことにあたるんだ、ということは彼の「うっ」という反応を見た瞬間に悟ったのだった。

冗談交じりに指差し仕返してきた様子を見ると、私がそれが失礼だと知らなかったことを理解してくれたみたいだが、

海外では人に向かって指を指す行為は、喧嘩を売るのと同じこと。

もうそれからは指を指すことはしなくなった。

ちなみに、プレゼンテーションをする際にも、スライドを指さしてはいけません。手のひらを広げて示すのがマナー。

 

“Foreigners” はタブー

学校で当たり前のように 外国人= foreigners と習った私たち。

そろそろ日本の英語教育の大々的な見直しをすべきだと思うのだが…

Foreigners はできるだけ使ってほしくない表現であり、学校でそのことについても教授すべき。

 

これに気が付いたのも、Fabbeとの交流の中だった。

浴衣を着たいんだけど、僕たちが着ても失礼じゃないかな?

全然!むしろ大歓迎!「外国人」が着てるのを見ると、私たちも嬉しいよ。

この「外国人(Foreigners)」という単語を聞いた瞬間、Fabbe がピクっと動いたんですね…。

Foreignersで画像検索したら、数少ない検索結果に日本の写真があった。

公式文書などで用いられる表現でもあり、Foreigners を使っても気にしないよ、という人もいますが、

スウェーデンは移民大国であり、日々移民と暮らしているため、差別問題にはとても敏感です。

「ガイジン」と呼ぶことは、相手を母国民と差別化して認識することを意味し、

差別的表現につながってしまう、と好んで使う人は少ないのです。

 

ちょっとした手間で、相手を不快に思わせない配慮をすることができます。

ただ、「Foreigners」の部分を、

「someone from other countries」「someone from outside」などに変えるだけで、

よりマイルドな表現になるのです。

 

「お箸使えるんだ~!すごい!」事件

ある日 Fabbe がお箸で焼きそばを食べていました。

いつものように必死に会話を探していた私は、

え!お箸使えるんだね!!すごい~!

と言ってしまったのですが、Fabbe はフッと苦笑いした後、

…スウェーデンのレストランにもお箸は普通に置いてあるよ。

と教えてくれました。

 

フィンランドに留学した際も、アジア系レストランにはごく普通にお箸が置いてあり、

学生の世代では特に、お箸が使えない人は稀でした。

 

お箸使えるのすごいね~!は、日本で言えば

「え、ナイフとフォーク使えるの~!すごいね~!」

と言うことと同じようになってしまう可能性があります。

十分気を付けて言うようにしましょう。

 

コンニャクが何からできているかわからない

ある日コンニャクを食べていたところ、

何それ?何でできてるの?

と聞かれ、言葉に詰まった思い出があります。

知らない…と答え、スマホで調べ始めると

何でできてるかわからないものを食べてるの??(笑)

と言われました。

これはただ単に笑い話でしたが、それでも少し気が付かされたことがありました。

 

フィンランドに留学した時は、常にヴィーガン、ベジタリアン、グルテンアレルギー、ムスリム等に囲まれており、

クッキングパーティーを開く際は毎回当たり前のように、原材料は厳密にチェックしていました。

原材料が何か全く知らないものを平気で食べるということは、

ヴィーガン、ベジタリアン、グルテンアレルギー、ムスリムが身近にあまり存在しない日本だからこそ

できていたことなのかもしれないと思うのです。

 

また、身近な日本の食材にあまり関心を持っていなかったということにも気が付きました。

当たり前のようにスーパーで買っていますが、

豆腐やコンニャクがどのように、どのくらいの手間暇をかけて作られているのか、

自国の文化とも言えるほど、なかったら寂しいなぁ…と思う食材たちに、

日本人はもう少し目を向けてもいいんじゃないかな、と思ったのでした。

 

お寿司が食べれない、アニメが好きじゃない

私の訪日外国人のステレオタイプは、日本大好き外国人を報じるテレビ番組の影響で

・お寿司大好き

・アニメ大好き

だったのですが、Fabbe はどちらも好きではなかったのです。

Fabbeが日本に来た理由は、アニメが好きとか?それともお寿司が好きとか?

ん~、僕魚食べれないんだ…(笑)アニメも別にそんなに好きじゃない。

え!(笑)じゃあなんで日本に来たの?

ん~、なんとなく興味があったから…。

というなんとも軽い理由で来ていました。

 

ところで、フィンランド留学時代に気が付いたのですが、

彼らにとって留学は、日本人よりももっと気軽なものなのです。

こちとら志望理由を何度も推敲し、圧迫面接を突破しないと留学できないというのに、

彼らは「ん~、暇だから来年留学しよっかな~」というノリで留学できます。

面接というよりも、軽い面談または志望理由アンケートがあり、OKが出たら留学できるシステムです。

また、彼らは大学費無料ですし、学生であるというだけで毎月政府からお金をもらえ、さらに

飛行機代金にも学割が効くので、お金の心配もいらない!

 

だから、ちょっと興味があれば、「やってみよう!面白そうだし!」という軽いフットワークで

挑戦することができるのです。

うらやましい…

 

授業を平気で休む

これはいいのか悪いのか、議論が始まりそうですが、

私が言いたいのは、彼らは「無理をしない」ということです。

今、すんごい学校に行く気分じゃない。行っても集中できない…

え、私もー。次の授業スキップして、お茶しに行かない?ケーキ食べよう!

いいねー!そうしよう!

スウェーデンには Fikaというお茶休憩がありますが、

名前が付いているだけあって、彼らにとって、とっても大切な時間なんです。

それは「ストレスが溜まってきたら、ひとまず落ち着くため」に必要な時間であり概念。

普段から自分は頑張ってる!ケーキでも食べてねぎらおう、そんな声が聞こえてきます。

 

 

また、彼らにとって、学校は何度でもやり直しのきく場であり、

日本のように留年に対してそれほど悪いイメージはありません。

そのため、授業や単位を血眼になって取る、という人はあまり見かけない印象です。

 

私の友人も「今年の夏はめっちゃやる気なかったから、テスト勉強しなかったの!見て!これ全部白紙ー!!(笑)いいの、来年また1年、受けなおすから」

と言った具合です。

学生に対して手厚い保障がついているからできることですね…。

 

ごはんを平気で残す

これも私的にはう~ん、と唸ってしまうところがありますが、

私は「ごはんがもったいないから、無理して食べる」なのに対し、

Fabbeにとっては「無理して食べて健康を害すくらいだったら、ごはんは残す」という考えなのです。

 

確かに、今振り返って見ると、

自分が食べたいと思うまで食べる、もう食べたくないと思ったら残す or 持ち帰る という人が多かったように思います。

さすがに、Fabbeがかつ丼を一口二口食べて捨てようとしたときは怒りそうになりましたが、

違う考え方もあるんだなぁ、と学んだことの一つでした。

 

 

「外国人」はみんな同じじゃない。

この “物議を醸す発言をしている人たち” (全員ではありません)の動画を見ているとわかりますが、

外国人に対して、ある一定の偏見を持っている人が多いことがわかります。

 

こういった「内集団から見て、外の人たちが、みな同じ特徴や性質を持っているように認識する」

というステレオタイプは、どこの国の人も、どの集団も持っています。

でも、ステレオタイプ自体は、ある程度しょうがないものなのです。

人は初めて会う相手と対峙した際に、相手を瞬時にステレオタイプで判断することで、

日々の情報処理速度を上げています。

ステレオタイプは切っても切り離せない存在なわけで、ステレオタイプ自体は悪いことではありません。

 

私も、外国との接点がまるでなかったためか、はじめはステレオタイプでガチガチでした。

外国人にシャイな人はいない、となぜか信じていましたし、

パーティー好き・マナーをわきまえない、といったイメージを持っていました。

 

潜在的な思い込みはしぶとく、なかなかそれが偏った見方だということに気が付かなかったのですが、

Fabbe と出会ったことがきっかけで、その思い込みの殻にヒビが入りました。

 

Fabbeはマナー違反するどころか、

むしろいつも「え?これ大丈夫?マナー違反じゃない?」と怖がっていましたし、

緊張で黙りこくる癖のある、根っからのシャイでしたし、

北欧はそもそも土足で家に上がりませんし、

とにかく、私の描いていた外国人像とはまるで異なる性格を持ち合わせていました。

 

ステレオタイプ自体は悪ではない一方、偏見や差別を誘発する偏った概念であることも事実です。

また、強いステレオタイプは、自分の視野に制限をかける要因ともなります。

ステレオタイプは経験や知識によってもみほぐすことができ、もみほぐされれば批判的に物事を見る力も付きます。

それにはあらゆることに興味を持って触れてみることが大切です。

そういう意味で、私のFabbe との交流は、自分の視野を大きく広げてくれましたし、世界への関心を開いてくれました。

 

 

あとがき:

Fabbe が帰国した後、スウェーデンの文化をネットサーフィンしたり、

授業で移民政策などについてレポートをまとめたり、「サーミの血」を鑑賞したりするうちに、

留学志望先は自然とスウェーデンになっていました。

 

しかし、スウェーデンには当時応募枠が一つしかなく、その一つも大学院生が優先されてしまい

私は面接官に「フィンランドはどう?」と言われたのです。

第二希望で申し訳ないけれど、これがフィンランドに飛び立った一つの理由でした。

 

スウェーデン系フィンランド人のカローラも、この時留学してきた友達です。

 

番外編

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